「ちょっと、キョウ。
 今夜は蛍を見に来たのっ
 そうでしょう?」

必死に拒絶して、その手を振り払う。

「……なんだ、残念」

さほど残念でもなさそうに彼はそう呟いて、ようやく私を開放してくれた。

ふぅ、と、息をついてもう一度自然がくれる瞬きに目をやった。


短い命を燃やすかのように、瞬き続ける小さな命。

――私は。
  自然の摂理に反するような長い命を手に入れて魔界とやらで末永く暮らすことになるのかしら――。

未だ答えの出ない想いを抱いて、儚い命の瞬きに瞳をやる。


吹き抜ける風は、ただ優しく、このまま私たちも、いっそ、ここで一緒に溶けてしまえれば良いのにと、願わずにはいられなかった。


Fin.