気まぐれに蛍は飛び去っていく。

直後。
隣から手が伸びてきて、私の手を掴むとそのまま胸の中へと抱き寄せられた。

「ユリアは何処に行っても人気者だな」

その低い声は、冗談なのか、妬いているのか。

……まさか、ね。

「蛍が気まぐれにやってきただけよ?」

キョウは私の言葉を聴いているのか居ないのか。
長い指を顎にかけ、強引に持ち上げるとキスをした。

「前もそんなこと言って、大変な目にあったのに?」

唇を離すと、ふわりと笑って言う。

「だって」

そんなこと言われたって、なんでもかんでも魔界のモノかもしれない、なんて疑いながら生きていくわけにはいかないじゃない。

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