篠田 実來。


  
 今年から晴れて高校生になる。


 
 中学時代の自分を忘れる為、


 出来る限りの事はした。


 例えば、


 スカートを膝上10センチぐらいにしてみたり、


 髪を染めたり、


 制服の着こなしもバッグも派手にした。


 

 全部昔のダサい自分を忘れる為。


 もうがり勉なんて言わせない。

 
 友達付き合いだって…。




 もう過去になんか振り返らない。
 


 そう決めたんだ。



 

 「 ひーひーひー…実來待ってくれたっていーだろう? 」



 自転車置き場に着くと、



 後ろから息を切らした那智がトボトボと歩いてくる。



 「 あは。ごめえん。 」



 そう言って口角を上げにこっと笑うと、



 自転車を乱雑に自転車置き場に入れた。



 「 ていうかさ、お前、今日喋るんだろ? 」



 「 は? 」



 那智の言っている意味が分からなかった。
 
 喋る?あたしが?どこで?

 

 「 だから入学式!1年代表だろ? 」



 那智が言うと数秒経ってから、漸く分かった。



 「 そうだあたし代表で喋るんだ!!! 」



 どうしよう………。
 
 一言も考えてないよ…。



 肩をがっくりと落とし、



 入学式で喋る言葉をぶつぶつ考えながら



 生徒玄関へと向かう。



 「 まっ待ってくれよ!! 」



 その後から那智も着いてきた。



 あーあー。

 入学式早々、もうヘマしちゃった…。



 そう思うとまた、肩をがっくりと落とした。