春。



 夏と違って熱くないし、



 冬と違って寒くも無い丁度いい季節。



 桜も満開でまるで恋で溢れてるみたい。



 だからあたしも、



 少しは期待したんだ。



 もしかしたら運命の人に出会えるかも知れない



 って。



 期待していたんだ ―――



 




 「 実來!!! 」



 真っ赤な自転車に乗っていると、後ろからあたしを呼ぶ声がする。



 ふと聞き覚えのある声に反応して後ろを向く。



 「 あー那智かあ。 」




 そう言うと何事も無かったように前を向く。




 「 ちょっと実來! 」



 
 那智のスニーカーのタッタッタッと言う音が聞こえる。



 あたしの後を着いてきているんだろう。



 そう思うとにやりと笑みを浮かべ自転車のスピードを上げた。



 「 おっさきー! 」



 また振り向いて那智に舌を出すと自転車置き場まで速いスピードで向かった。