それから何分か喋っていた。


 
 質問したり、されたり。

 「大人の男」
 
 と、思っていた先生の顔は、

 話す度に段々子供らしい無邪気な顔になる。

 そんな先生の顔が、

 何だかかっこよく見えた。



 

 けれど…

 先生の薬指に、指輪がはめてあった事、

 知っちゃった。



 ちょっとショックかも…。



 あたしは先生の顔を見つめながら、



 肩を落とす。



 
 すると先生は、



 腕時計を見て「あっ」という声を出した。



 「 そろそろ職員室行かなきゃ。

 実來一人で大丈夫?? 」



 心配そうにあたしを見つめる、先生。



 「 うん大丈夫だよ。ありがとね。 」



 そう笑顔で言うと、



 ベッドから飛び起き、上靴を履いて保健室を出た。


 
 「 失礼しましたー。 」



 
 保健室を出て、



 隣の隣の1年A組に足を運ばせた。



 …ふう。

 少しは楽になったかも。

 きっと先生のおかげだね。

 

 いつの間にか先生は、



 あたしの中で、



 大きな存在に変わっていく事は…



 あたしも、先生も



 誰も知らない。