「…それにしても遅いのう…今日で二日目だ。
晴明は何をのんびりやっておるのだ?」
 
帝の間でソワソワと晴明を待つのは右大臣の菅原道真だった。
帝は君主らしく黙って座したまま、その姿を眺めていた。

葉明もこの件が片付くまで帰るに帰れず、壁に背を当てた姿勢で友を待った。


そんな時である。

帝の間がゆっくりと開かれると門番がこう言った。


「源頼光様参られました!」


葉明がチラリと視線を向けると、頼光が酒瓶を一つ抱えて入ってくるのが見えた。


(なんだあの酒瓶は…?献上品にしては薄汚すぎないか?)


透は近くに寄って観察してみたが、何の変哲もない陶器の酒瓶であり、とてもじゃないが高価な物には見えなかった。
…ただ、酒瓶の口に貼られたお札が儀式的な何かを感じさせていた。