（とりあえずこの夢が誰の物で何を見せたいのかを掴まなければいけないな…。よし、こうなったらとことん見てやるよ。）


透はそう決心すると屋敷の中へと足を進めた。


足音もなければ気配もない。
透はただ流れる風景に誘われるように、ただ見ていけばいい。


透が古い作りの屋敷を観察しながら歩いていると背後からバタバタと走り来る足音が聞こえた。


その足音の主は透の体をすり抜けると、近くの部屋へと入って行った。


「旦那様！朝廷より文が来ております。」


そう言ったのはこの屋敷の侍女らしい。
家事仕事のしやすそうな衣に後ろに束ねただけの髪が、透には珍しく感じられた。

透が中の様子を見るために部屋の中に入ると、そこには姿勢正しく座る侍女と位の高そうな着物に身を包んだ男が、手紙らしき物を読んでいた。