「いえ…何でもないんです。気にしないで下さい…。」


「わかったわ、何か理由があって話せないのね?
無理矢理聞くのは趣味じゃないから…。
さ、もう少しで着くから行きましょう。」


それだけ言うと命は背を向けた。


「アンタ何隠し事してんのよ、仲間にも言えないなんて…らしくないじゃない。」


「そうだよ…いつものお兄ちゃんなら話してくれるのに。」


忍と彩音も心配そうに透を見つめている。
だが沙綺だけはまじめな顔で一度頷いた。


「神楽、何言われたか知らないが…お前が正しいと思う道を行け。信じてるぜ!」


沙綺はそう言うと、透の背中をバンと叩いて励ました。


「皆…すまない。」


透は思い詰めた表情で呟くと、その場にいるのが辛くなって走り出した。


(俺は…俺は…!畜生!どうしたらいいんだ!)


心の叫びを聞いているのは妖の魂達だけ…。
それでも答えは返ってこなかった。