何故俺にしか出来ない!?

何故仲間には秘密なんだ!?

何故天照に力を貸す必要があるんだ!?


何故俺の中の妖を信じるんだ!?


余りに唐突な酒呑童子の要求に、透の顔は蒼白になった。

周りにはすでに沙綺達が心配そうな顔で囲んでいた。
しかし、そんな声すら届かずに透はふらふらと歩き続けていた。


(天岩戸の中へと入る?神界への門を生身の人間が通る事が出来るのか?
足止めするっていつまでなんだ!?)


仲間に聞きたい!相談したい!
その衝動が胸に沸き上がってしょうがなかった。
『仲間の命が惜しければ黙っておく事。』

酒呑童子の言葉がよぎった。

…意味は分からないが、嘘はつかないだろう…。
透は聞くに聞けない葛藤に頭を激しく振った。


「坊や…童子に何か言われたのね?彼、なんて言ってた?」


命が透の肩に優しく手を置いて語りかけた。

しかし透はそれに答える事は出来ずに、命の瞳を見つめ返すしかなかった…。