「ス…スサ…ノオ!?」


透は月の光に映るシルエットに喉をカラカラにして呟いた。

目の前に神が居る。しかもそれは人類の行く末を握るほどの強大な…。

透が瞬きすら忘れて見つめていると、月の光で横顔が照らされて見えた。

とても綺麗で悲しい目をした横顔は、とても荒神とは言えない美しいものだった。


「何を見とれている…。我に会いたかったのでは無いのか?玄奘の息子よ。」


スサノオはニヤリと口の端をつり上げて笑うと、右手を透に向けて差し出した。


「今宵は良い月だ。そうは思わんか?
…後二日で満ちる。残りの勾玉はその時返してもらうとしよう。
戦うもよし、逃げるもよし、結果はいずれも変わらん。好きに選ぶが良い。」


透はその言葉に、命との会話を思い出した。
スサノオにとっては犠牲者など関係は無いのだ。