それからしばらくして荷物を持った一同が玄関先へと集合した。

しかし来るはずの幹矢の姿が無い。
透は側にいた月読に理由を問いかけた。


「不動さんはまだなのか?」


話を振られた月読はゆっくりと頭を横に振った。
よく見ると彼女も手荷物を持っていない。


「うむ、その件なんだが、どうやら幹矢とワシは他にやる事があるらしい。先程居間にいた幹矢がそう言っておった。
西の長からの指示らしいが…?」


そう言って不思議そうに元の顔を見た月読。
元は何食わぬ顔で皆に聞こえるように説明した。


「ほっほっほ、ちょっと彼には頼み事があってのう。月読殿とこちらに残ってもらう事になったんじゃ。
なに、心配は要らんわい。ワシ等は先を急ぐぞ、出発だ。」


一同はいまいちよくわからない説明に首を傾げたが、元と幹矢が話をしたのなら間違いはないのだろうと納得した。


「まぁ、後から幹矢に内容は聞いておくとして、何かあればすぐにワシを喚び出すのだぞ!?よいな?」


月読は忍と彩音の顔を交互に見つめて言った。


「わかった月姉!」

「うん!先に行くねお姉ちゃん。」


忍と彩音は月読に軽く抱きつくと、離れ際にそう言葉を交わして手を振った。善次郎と琴子は、去り行く透達を黙って見送り、一度だけ深く頭を下げた。


「皆様、どうかご無事で…。」