「そうじゃな、そろそろ出発するとしよう。お前達も荷物をまとめてきなさい。」


元がにこやかにそう促すと、一同は自分の荷物を取りに居間から出て行った。

そして最後に幹矢が席を立つと、元はその背中を呼び止めた。


「不動君、すまんが折り入ってお願いがあるんじゃ…。」


「…?何でしょう?」


幹矢は予想外の呼び止めに思わずキョトンとして振り返った。

元はそんな幹矢に真顔で相談を始めた。


「この戦い…お主等は外れてくれまいか?」


「はい!?な、何をおっしゃるのですか!今は少しでも戦力が必要な時でしょう!!」


思わず声を荒げた幹矢に、元は決意を持った返事を返した。


「これはワシの遺言と思って聞いてほしい。
…この度の戦で神器の守護三家を全て絶やすわけにはいかん!白蓮殿が亡き今、ワシと不動君まで倒されたとしたら神器の恐ろしさと重要性を伝える者がいなくなる。
少しでも希望を残しておきたいのじゃ。」


「しかし!その時にはすでに世界が消えてしまっているかもしれないのですよ!?それでは手遅れでしょう?」



テーブルに両手を着いて身を乗り出した幹矢は、元の考えが理解出来ずに混乱していた。


「…それは最悪、全てが奪われた時の話じゃろう?だが、もしも神器が奪われない…また天岩戸が開く事の延期。となった場合はどうじゃ?次への可能性は否定できまい。」