「わかったわ…確かにやってみなきゃわかんないわよね。
やられっぱなしじゃシャクだから一発ぶち込んでやるわよ!」


忍はニカッといたずらっ子の様な笑顔で言うと、弓を透から受け取って立ち上がった。


「月姉、矢ももらっていい?もう出なきゃ伊勢に着くのが遅れちゃうわ。」


「よし、すぐに準備しよう。破魔矢は幹矢が清めた物が沢山あるからな。」


月読は忍に頷き返すと、さっきとは別の方へと歩き始めた。


「月読?何で矢はそんなに準備してあるんだ?向かおうとしてる方向もさっきとは違うみたいだし…。」


思わずそう質問した透に向かって月読は呆れ顔でこう答えた。


「ここは神社だ、破魔矢くらい普段から売っとるわ!」


「あ…そうだった…。って売り物かよ!」


思わずツッコミを入れた透に、月読は笑いを堪えることが出来ずに吹き出した。


「くっくっく、たわけが騙されおって。そんな物が使えるわけ無かろう。
幹矢が旅に出た時の万が一の備えとして琴子に渡していた物があるだけだ。矢に霊力を込めておけば小妖くらいなら追い払えるからな。」


月読はニヤリと笑うと居間を後にした。


「なんだ…そうならそうと言えよな。…まぁいい、俺達も準備して出発しよう。」


透はお茶を飲み干すと自分の荷物を運ぶために立ち上がった。