「しーちゃんボーイッシュというかサバサバしてるから特にモテ…モガモガ。」


「はいはーい、彩音ちゃんいい子だから少し黙ってようね〜。」


忍はなおも続けようとする彩音の口を押さえて強制終了させると、顔だけ幹矢に向けて話を元に戻した。


「それで…この弓は普通の使い方でいいのかしら?そう簡単に当たるとは考えられないけど…。」


そう呟いて忍は、風神・雷神との戦いを思い出していた。
…こんな細い弓と矢で狙った所で、あっさりと吹き飛ばされそうなものだ。
そもそも狙いを定める暇などあるだろうか?と。

その問いかけに一瞬間を置いて、幹矢ははっきりと答えた。


「やってみなきゃわかんない!」


「………はぁ?」


「えっ!?何で皆さんそんな痛い目で見るんだい!?僕自身使った事無いからそう答えたんだけど…。」


一気に場の空気をシラケさせた幹矢は、一同の刺さるように冷たい視線を浴びてしどろもどろになりながら付け加えた。


「つ…使い方は昔聞いたんだけど、霊力を弓と矢に込めて射ればいい。
…ただ、敵を討つという信念が無いと威力は発揮されにくいらしい。それは霊的な呪具にはとても重要な事なんだ。
もちろん鬼切丸にも言える事だよ。」


確固たる決意…自分を信じる気持ち…護りたいという想い…。
確かに今まで見てきた呪具は、三種の神器を含めて例外なく強い気持ちとともに力を発揮していた。

酒呑童子の首をハネた時の葉明と渡辺綱達の必死な想い。

元や彩音達を護りたいという亮太の想い。

そして妖怪の身でありながら、鏡の守護者として護り続けたオマモリサマの想い。

幹矢が言う「信念」とはそういう事なのだろう。