透は幹矢に断りを入れて、弓を袋から出してみた。

元がそれを真剣に見つめる中、取り出した弓は思いのほか軽く、戦国武将達が扱う剛弓とは全く違う細弓だった。

白く色着けされた和弓は飾り物に見えなくもない。
しかし手にした瞬間、透の中にいる妖達の魂がざわめいた事から、確かに破魔と言うだけの霊的な力はあると感じた。


「これ…忍か彩音が使うって?…使いきれるのか?」


透はそんな都合いい話はないだろうと2人に問いかけた。

すると彩音は忍の顔を見つめ、忍はチョコンと手を挙げた。


「へ?お前…弓とか使えるのか?」


「まぁ…一応弓道部ですから。」


キョトンと間の抜けた顔で聞き直した透に、忍は少し恥ずかしそうに答えた。

すると彩音が皆の方へ笑顔を向けて話し出した。


「しーちゃん弓道部の部長だったんだよ!全国大会にも出た位なんだから!
後輩の女子にもモテモテで…妹としてはしーちゃんが取られないかとヒヤヒヤしたものさ。」


妙に感慨深げに腕を組んだ彩音は遠い目をしながらそう語った。


「バッカ…そんなこと無いわよ!モテてたなんて…変な勘違いされるでしょ!!」


忍は彩音の主観的意見を慌てて否定した。


「いいえ〜。忍先輩に!忍先輩に!ってラブレターの受付係やらされましたもの。
彩音としーちゃん間違える子も沢山いたんだよぉ?」


彩音は少し膨れて忍を横目で見つめた。