その様子を見ていた沙綺が月読に問い掛けた。


「なぁ、その服って着る意味あるのか?今の時代なら目立つんじゃねーの?」


透は着物を広げて見ている彩音に視線を向けた。
手に持つ着物は、巫女服のようにも見えるが少し変わった着物だった。
確かにこの格好で外を歩くのは目立つかもしれない。

しかし月読はこちらに顔を向けると、はっきりと頷いて答えた。


「理由はある。これは霊的な意味合いでとても貴重な祈祷服なのだ。」


「霊的な意味合い?どんな感じにだい?」


沙綺は妖怪の知識はあるものの、霊や神仏の知識には疎く、いまいち意味が解らなかった。

透と彩音も似たような表情をしていたのを見て、月読は続けて説明を始めた。


「凶祓いの一族は悪霊や呪いを祓う占い師を発端とする一族だ。
そして中には幹矢の様に神仏の加護を受けた者もおる。
…代々悪鬼悪霊、魑魅魍魎と戦ってきた一族は、相手の邪気に取り込まれないよう霊的な防具を身につけた…、それがこれだ。」


月読はそう説明すると着物を彩音に着せてサイズが合っている事を確認した。


「それじゃ要するに、取り憑かれたり幻覚を見せられたりはしなくなるって事か?」


透は何となく想像した事を言葉に出してみた。
しかし月読はそれには答えずに黙々と着付けをしていた。