夢の中で感じた清廉な晴明の霊気と、自分の中に息づく酒呑童子の妖気が鬼切丸からは確かに伝わる。これは透にしか解らない事実であり、幹矢の言葉がそれを裏付けしていた。


「お〜い、彩音!こっちに来てくれ。」


透がボーっとしていると奥から月読の声が聞こえた。

その声に反応して彩音は片付ける手を止めて奥に向かった。


「どうしたの月姉?何かあった?」


不思議そうに月読の背中に声をかけた彩音は、その手に持った着物に視線を落とした。

透もその様子を伺っていたが、この位置からは何を渡そうとしているのか分からない。
特に気にしているわけではなかったが、片付けを続けながら何気なく会話に聞き耳を立ててみる事にした。


「これか?これは不動家に代々伝わる祈祷服みたいな物だ。…凶祓いの一族としての戦闘服と言った方がよいかな?これをお前と忍にやろう。」


おもむろにそう言われた彩音は、手をパタパタさせながら慌てた。


「え?ええ〜!?そんな大事そうな物貰えないよぅ!」


月読はそんな彩音の手を握ると強引に着物を二着押し付けた。


「丁度良い丈の物が二着有るんだから着れるなら受け取れ!ここに置いておいても宝の持ち腐れだろうが!よいな!?」


「あぅ…はい。」


グダグダ言わずに受け取れといった雰囲気を全開にした月読に、彩音はそう答える以外に道は無かった。