(確かに天照大神も黙ってはいないでしょうね…。でも、それはスサノオが神界に行こうとする事を咎めるんじゃない。
…そこを彼も勘違いしている。)


命は少しの間目を閉じて黙していたが、うっすらとその瞳を開けて自分の白く細い手を見つめた。


(出来ることなら天岩戸を開かせないのが一番…。
でもそれでは根本的な解決にはならない。スサノオが現世にいる限り、再び何らかの方法を考えて来るでしょうね。)


命は拳の形にぐっと握りしめると確信を持った面持ちで歩き始めた。


(彼が気付いていない今の内に神界に行かせた方がいいかもしれない。
これはある意味大きな賭になるかもしれないけどね…。)


命が考える内容を、他の者達が聞いたら間違いなく違和感を感じるだろう。
天岩戸を開かないのがベストと思いながら、根本的な解決をするならスサノオを神界に行かせるべきだという矛盾…。

それは全て彼女しか知り得ない天照大神と百鬼夜行の本質が理由だった。

ただし、彼女にも自分が考える通りに事が進むとは言い切れない部分はあった。
それでも彼と争うよりも遙かに高い確率で、未来の望みが神達に託せると信じていた。


「全ては天照大神の考えによる…。神界からの追放処分は決して甘くはない。貴女は世界を変えようとする違反者にどんな制裁をするのかしら?」

そう言ってフッと微笑んだ命は、ひとまず透達と話をするため彼らの元へと向かった…。