しばらくの沈黙を経て、最初に口を開いたのは忍だった。

忍はテーブルに置かれた勾玉を手に取るとマジマジと見つめてこう言った。


「こんな物壊してしまえばいいんじゃないの?あんたの馬鹿力を使えば砕けるんじゃない?なんなら前鬼にハンマー持たせてガーンと…。」


「それはならん!!」


「師匠…。」


話の途中で元が忍を一喝した。
忍はビクリと肩をすくめると、元がなぜ止めたのか分からずに不思議そうな顔で彼を見つめていた。

元はゆっくりと天井を遠い目で見つめながら、皆に聞こえるような声で理由を話し始めた。


「…これらは人間の作りし物ではない。天地開闢の頃より存在するこれらの神器に込められし霊力は、龍脈の力そのものと言えるほど強大なものじゃ…。
お主等も退魔士ならば知っておろう?龍脈の流れを止めることの重大さを。」


元は視線を戻すと険しい目付きで一同の顔を見渡した。

龍脈を止める…それは天変地異の発生を余儀なくされるほどの危険行為だった。

自然界においても不規則な流れをしている龍脈が、以前少し乱れただけで阪神大震災という大きな悲劇をもたらした。

今は亡き白蓮も、それは地球規模で見ればまだ軽い方だと言っていたのを沙綺は思い出した…。

そんな強大な力がこの小さな石には有ると元は言っているのだ。