(ハナから勝ち目なんて低い話だ…勝てないという事は守れないという事。
奴等には霊力の注がれていない銃器なんて効くはずもない、警察や軍隊なんて集めたとしても無駄か…。どう考えてもここにいる人数で挑むしかないのか。)


透は漫然とそんなことを考えていた。
退魔士は集めれば全国にまだ数多く居るはずだ。当然中には名だたる術者も居るだろう。

しかしながら彼等を一堂に集める時間も余力もない。いちいち三種の神器とスサノオの話をしていても始まらないのだ。


「それにしても…天照大神に俺等が会えるとは限らないっすよね?もしかしたら神界から出てこない可能性もあるでしょ?」


沙綺は相変わらず釈然としない面持ちでそう呟いた。

確かに一理はある。天岩戸が一体どういったものなのかも分からない。
現世に器を持たない天照が、自分達と会話する事が可能なのかも分からない。

スサノオ達ですら現世に干渉する為に器を得ている以上、様々な不確定要素が多い提案だった。


「やはり最初から神器を渡すのは反対だ。」


透は決意を固めてはっきりと自分の意志を告げた。


「急にどうした神楽?さっきまで黙ってると思ったら。」


「まずはっきり言える事は一つ、神器を素直に渡した所で俺達が生かされているかも分からない。
スサノオが天岩戸を開いている間に、牛頭や風神達に始末しておけと言われれば元も子もないだろ?
そんな手一杯な状態で誰が天照に交渉できるんだ?」


透の言葉に一同は沈黙した。