幹矢は両手を上げて落ち着くように透をなだめると、続けて話し出した。


「まぁまぁ、最後まで聞いてくれ。
もう一つあると言ったのは、スサノオに待ち受ける最後の砦に賭けるって話だよ。
…天岩戸を閉じ、スサノオを神界から追放した女神、天照大神にね。」


幹矢が言った名前を聞いて、一同はシーンと静まり返った。

二神一対の創造神「イザナミ」と「イザナギ」。
その彼らが最初に創り出した神が天照大神である。創造神の直系にして神格第二位の神…幹矢は何を言おうとしているのだろうか…。


「…つまり、スサノオが天岩戸を開く理由は、イザナミとイザナギにこの世界の破滅と新世界の創造をさせるため。
しかし神界から追放された彼が天岩戸を開くということは、明らかに違反行為だ。
ということは天照大神が黙っているはずがないと思うんだが…?」


「…スケールがデカすぎて俺にはさっぱりだけど、不動さんは天照大神の補助をする事で乗り切ろうとしてるのか?…あれ?」


沙綺は自分が言ってる事すら良く分からなくなって首を傾げた。

しかし幹矢はゆっくりと頷き返して「その通り。」と同意した。


「天照大神がスサノオに言いくるめられるとは考えにくいが、万が一彼女もこの世界を単なる創造物と考えているならば話は別だ。
神にとって大地や人間やあらゆる生物が造り変えればいい程度とするなら、そこまで必死にはならないかもしれない。」


「…だから俺達が力尽きる前に懇願して助力を得ようってわけか…。」


「虫のいい話だとは思うけどね…。単に命を落とすよりは少しはましだろ?」


幹矢は力なく笑うと皆の意見を待った。