もうすでに視界には何もない…音もなければ上下の感覚すらない。


透は動き回るのを止めて立ち止まった。


(夢の終わりか…。)


そう呟いた時、背後からやたらと鮮明な声が聞こえた。


『ああ、ここまでだ神楽の坊主。』


(あんたは…酒呑童子…。)


振り返った透の前にいたのは、先程首をはねられて倒された酒呑童子だった。


(やはりあんたの夢だったのか…。
俺にこんな夢を見せるなんてどういうつもりだ?)


『知るかよ俺様が憎しみを忘れないために思い出してた話に勝手に入り込みやがって
テメーには関係ねえだろ』


酒呑童子は透の胸に指を押しつけると、至近距離で怒鳴った。