あれから何日か経ったある日、シンタロウは自分の目がいいのを心底悔やんだ。
力無く座り込んだ女の背中はひどく落ち込んでいるようで…
あの日から毎日見ていて、女は伸びをしたり、何かを海に向かって叫んだりはしていても、座り込んだりした姿は見たことがなかった。
女の手がゆっくり動き、涙を拭うのがわかった。
(…………泣いて…るのか?)
ほんの一瞬の出来事…
でも、女に対する衝動を駆り立てるのには十分な出来事だった。
足がそこに向かおうとしたのは、ごく自然な気持ちで………
しかし……
「シンタロウ。
明日からの遠征のことで打ち合わせておきたい事がいくつかある。いいか?」
「……………ああ。」
『完璧な総帥』はそれすらも許されなかった。