「…あの子………」

そう小さく呟いたけど
そのままじっと
入学式が終わるのを
ひたすらに待っていた。

話ばかりの入学式も終わり
私達は拍手に送られながら
今度は5組から退場した。

真田先生を先頭に
男女一列で教室へと向かった。
もちろん喋る人なんかいない。

そして教室に着くと
すぐにどっさりと
重い教科書が配られた。
全く容赦がないと
嘆きたくなってしまった。

無理矢理全部をスクバに
詰め込んでみたが、
そのスクバは
かなりの重さがあった。

「明日の持ち物は、
配布したプリントに
書いてあるので
また明日元気に来てください。
今日はこれで終わりです。」

その真田先生のお話で
今日は終了だった。

短いはずなのに
長く感じる時間だったと思った。

それから、『各自帰宅して』と言われ、
私は重いスクバを引きずりながら
玄関までゆっくりと歩いた。

また、気になった彼女を見つけたが、
話しかけられる状況ではなかったので、
私はそのまま彼女の前を通り過ぎた。

重いスクバを抱えているせいで
何倍も時間がかかって大迷惑だったけど
何とか家まで辿り着くことが出来た。