美咲が時計を見ると時間は11時を回って行った。

「あ、もうこんな時間。そろそろお暇させていただきます」

美咲はソファから立ち上がった。


「狩野、送るよ」


ソラは半そでのシャツの上に上着を羽織りながら言った。


「そんな、悪いよ」

「何言ってるのよ。こんな時間にかわいい女の子が一人で帰っちゃ危ないわ。高空に送ってもらいなさい」


美咲は少し戸惑いながらも、お願いしますとソラに言った。


「美咲ちゃん、ホントにまた来てね。おばさん待ってるから」


楓の笑顔に美咲の心が緩む。


「ありがとうございます。おば様、お大事に」


楓は美咲を気持ちよく送り出してくれた。






「狩野、今日はありがとな」


二人で歩く帰り道、ソラがいきなり美咲にお礼を言った。


すでに雨はやみ、空には星も出ていた。


「何でソラ君があたしにありがとうって言うの?お礼を言うのはこっちだよ」


「いや、なんか母さんが他の人と楽しそうに喋ってるの久しぶりに見たからさ。母さん、若い時は花がホント好きでさ、家は花でいっぱいだったんだ。でも、体を壊してからはなかなか…」


しばらく二人の間で沈黙が流れる。


「これからもさ、母さんの話し相手になってくれるとうれしいよ」


「うん」


美咲は静かにうなずいた。