美波が言ったとおり、二週間たって美咲の両親が日本に帰国した。


「美波、美咲、蓮哉。久しぶりだな」

三人の父親の和彦。


前髪をオールバックに固め、少し太った体は貫禄を感じさせる。


「元気だった?」


母のみゆき。


綺麗に化粧をし、長い髪にはパーマがかけられ、上品さが漂う。



「美波、仕事のほうはどうだ?」


「順調です」


「さすが美波ちゃんね」



いつもはサバサバした性格の美波も今日ばかりは言葉遣いが変わっている。



「美咲は勉強は頑張ってるか?」


「はい」


「お前には弁護士になってもらわないとな。医者の次は弁護士。我が家は優秀だ」


そう言って笑う和彦を見て、美咲は黙って顔をうつむけた。


親に何も言えない自分が腹立たしかった。


「蓮哉はどうなの?」


みゆきは美咲の隣の蓮哉を見た。



「普通」


「普通とはなんだ?もっと言い方があるだろう」


「悪いけど、俺用事あるから。それじゃ」


蓮哉は和彦とみゆきにひらひらと手を振ると家を出て行った。


「蓮哉さん!待ちなさい」


「ったく、あいつは…。髪まで茶髪にしてあれでは不良じゃないか!」


美咲はただ蓮哉が去っていくのを目で追っていた。


親に堂々と歯向かえる蓮哉がうらやましかった。



「美咲」


「はい」


和彦に名前を呼ばれ、美咲は顔をあげる。


「今はお前と蓮哉は二人暮らしだ。お前が連哉の行動を注意しときなさい」


和彦はイライラを抑えるために煙草に火をつけた。



「美咲ちゃん、よろしくね」


みゆきに手を取られた美咲はただ「はい。」と頷くしかできなかった。