「犬じゃない」


鈴姫を抱きしめながら俺はそう呟いた。


「帰る準備しておいで。どうせまた一緒に帰るでしょ?」


以前と変わらない。

でも以前とは確実に違う、関係。


「陽乃芽先輩……」

「あれ、もう鈴姫って呼ばないの?」

「呼んでいいんですか?」

「特別だからね」


『鈴姫』……俺の特別な人。


特別な呼び方で、俺だけの呼び方で、俺は彼女を呼ぶ。


「鈴姫」

「紲」


互いを呼び合うだけで、シアワセ気分だ……。


「おいそこのバカップル、なんでもいいけどお前ら教室中の注目の的だからな?」