「仕方ないから今日は帰るよ」

「二度と来んな」

「そうだよ 二度と来んなっ」

奏君は何事もなかったかのように帰っていった

「何しに来たんだろ……奏君」

「知らね 喧嘩売りに来たんじゃね?」

「あの 翔……ごめんなさい」

だって

不意討ちだったんだもん

「ごめんじゃねぇよ 謝ってすみゃ警察はいらねーんだよ」

翔はまたあたしにデコピンした

「インターホンで確認しろよな 不審者だったらどうすんだぁ……ぇっくしゅん」

「……?!」

くしゃみ

超至近距離

びびったぁ

「やべ 地味に寒い」

「……ぷっ」

濡れた髪の毛をタオルでごしごし擦る翔

寒いって

夏なのにっ

「……ははっ」

あたしは思わず吹き出した

「あはははっ」

「笑うなよ」

「だって……あははっ」

「笑いすぎ」

「ご…ごめん はははっ」

やっばい

つぼった

「………あのさぁ」

「何?」

あたしが落ち着いたところで翔が言った

「………。」

ん?

―――ちゅ

「………。」

え?

「……悪ぃ やっぱ俺には気をつけて」