観客の動員が増えるに従って、浅美はその歌詞によって胸の内を晒されているような気持ちになり恥ずかしかった。

また、彼を一人占めしているような気持ちを壊されるようでもあった。

最後から二番目の曲になり、観客全員がジャンプを始めた。

一斉にジャンプをすれば、少ない人数でもそれなりにフロアが揺れるような感覚がするものだ。

さっきよりも、空気中を舞う埃の量が増えたようだった。

それは、自分の周りやスカートのレースの裾を取り囲む空気からも感じ取れた。

誰かの服から剥がれ落ちた小さい羽根が、スカートに当たってはね返っていった。

それを目で追いながら、浅美は絵梨と一緒に片手をあげて片手を繋ぎながら跳ね続けた。

一心不乱に跳ねているうちに、自分が鳥になったような気分になった。

私が小鳥なら、あのシルクハットの中に入って、いつまでも栄くんの側にいられるのに。と、浅美は考えた。

でも、こんな幸せな時間も今日で終わりなのだ。

泣きそうになるのをこらえながら浅美は片手をひらひらと羽のように動かした。

それが栄に伝わったかどうかはわからないけれど、彼は思いっきりの笑顔で浅美の顔を見返してくれた。