「伊音は知らないんだ」
ベッドの中、裸で手を繋いで
伊織くんは天井をじっと見つめて言った
「伊音はオレが父親だって知らない
オレも茜音も…伊音には一生言わないつもりだ」
……伊織くんは伊音くんを
本当に愛してる
自分の息子として
本当は自分が父親なのだと名乗りたいんでしょ?
名乗らないのは
伊音くんを混乱させないためも あるんだろうけど
未だに拭えない過去に対しての戒めなのかも知れない
そして 私は 彼の そんな想いごと受け入れて 一緒に抱えて生きて行く
「いつから……独りだったの?」
いつ、茜音さんと伊音くんは この家を………
伊織くんは 天井を見つめたまま
「親父の一周忌終わって二人は出て行ったよ
風羽ちゃんと最後に別れた夜
オレは本当に茜音と結婚しようと思ってた
だけど実際は無理だった
何をしても…君の顔ばかり思い出して
茜音にも気持ちを隠しきれなくてさ
結婚なんて………一緒にただ暮らすことすら出来なかったよ」
伊織くんは切なそうに
遠くを見つめてるような目をした