私は ゆっくり腕をほどいて
涙で ぐしゃぐしゃの顔のまま
伊織くんの目を見つめて
「私は伊織くんが好きです
きっと初めて逢った時から
ずっとずっと伊織くんが好きです
だから、伊織くん…私と……」
伊織くんは
そっと私の唇に指先を当てた
「そこから先は
オレに言わせて?」
伊織くん…………
「オレは子持ちだし
いろいろ面倒くさい男だけど
ずっと風羽ちゃんが好きだ
風羽ちゃん……………」
あ、どうしよ………
涙で目の前が揺れる
「風羽ちゃん
オレと結婚してください」
そう言ってくれた伊織くんの顔は
絶対にかっこ良かったはずなのに
私の目からは涙が溢れて
前が全然 見えなくて
一生に一度の彼の表情が見えなかった
そっと私の頬に伊織くんの手が触れて
指で涙を拭ってくれる
温かい手
優しい手
大好きな伊織くんの手………