それ以上、何も言えなくて
私は うつむき沈黙が流れた
「で、風羽。その荷物は何?」
ギュッと膝の上、
両手を握りしめた
「私は彼が好き
どうしても諦めることが出来ない」
はぁ……って、
お母さんがため息ついて
「だったら何で他の人と婚約なんて………」
「い、いろいろ事情があって…」
言い訳をする私をお母さんは横目でにらんだ
わかってる
どんな事情があったにせよ
私のワガママで
婚約者を傷つけて………
周りに迷惑かけた
「その好きな人は風羽のこと待ってるの?」
私は首を横に振った
伊織くんは 私みたいな面倒くさい女、迷惑だよって言った
それから伊織くんとは連絡とってない
「だったら風羽…その荷物…」
お母さんは眉をひそめて
トランクを見た
「ごめんなさい。お母さん
彼は私を待ってはいない
それでも無理やりにでも
私は―――――――………」