私もてっちゃんの後を追い
湖に背を向けて歩き出す
でも
立ち止まり湖を振り返る
あの6月の初夏の匂いが
よみがえって
湖の上には まだ ぎこちなく
ボートに乗って話をする
伊織くんと私がいる
何も知らずに
デートを楽しむ私たち
もしも、結末を知ったまま
あの頃に時間が戻ったら
私は どうするかな?
どうせ結ばれないと
伊織くんを避けるだろうか?
ううん
考えなくても わかる
どんな結末が待っていようと
私は何度でも伊織くんを愛する
静かに息を吸い込んで
また湖に背を向けると
そんな私をてっちゃんは立ち止まり待っててくれた
「ごめんね。もう大丈夫だから」
私がてっちゃんの隣に駆け寄ると
「うん」って
てっちゃんは うなずいて
私の肩を抱き寄せて
頭をわしわしってかき混ぜるように撫でた
肩を抱かれたまま
私たちは車に戻った