伊織くんと来た時は6月で



近づく夏の匂いと



眩しく輝く太陽



木々は緑に生い茂ってたけど




今は冬



冷たい空気と



澄んだ青空



木々は葉を全て落とし
裸の枝は寒そうで



伊織くんと乗ったボートは


冬季休業に入っていた




碧い湖の淵にたたずみ



あの日の伊織くんの笑顔を湖の冷たさを思い出していると




てっちゃんが隣で



「さっぶ――――いな!
すっげぇ、しばれる(北海道弁で寒いとか凍るの意味)」




腕を固く組んで てっちゃんはブルブル身体を震わせた




思わず私は笑って



「やめてよねぇ
人が神聖な儀式を執り行おうって時に」


てっちゃんは
不思議そうな顔をして



「儀式?」と訊き返した



私はてっちゃんを見つめて
うなずいた