二人でタクシーに乗って



窓の外



スクロールして行く街灯のあかり



通りすぎる車のヘッドライト



伊織くんは 窓に頬杖ついて



私からは顔が見えない



何を考えてるの?伊織くん




私は覚悟 決めたよ




今夜、この夜を逃したら



きっと もう伊織くんに
本当の気持ちを伝えることは出来ない気がする





あと少しでマンションに着くところで




「伊織くん」



伊織くんは ゆっくり私の方を向いて




「なに?」




目が合うと



ドキン



胸が震える




「少し…話がしたいの…」



「話?」



「うん。だから、家に寄ってくれない?」




伊織くんは
困ったような顔をして



「もう今さら話すことなんてないだろ…………」



低い声で言った