「離して………」
恐怖に声が上ずる
「少しだけ、少しだけ
話をしませんか?」
男の人は腕を掴んだまま
少しだけ 少しだけって繰り返して言った
キモい 絶対 危ない
どうしよう
ひざが ガクガク震えて来た時
「何してんだ?」
―――――――嘘だ
「何してんだよ。お前」
伊織くんが男の人の肩を後ろから掴んで
「その子に触ってんじゃねぇよ
早く手ぇ離せや!」
伊織くんが怒鳴り付けると
「………うわっ」て男の人は小さく叫んで
走って逃げて行った
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