私がどんなに
伊織くんを想っても
伊織くんを救えるのは
目の前の
茜音さんだけ………
そう思ってしまうと
涙は止まらない
周りの人が怪訝そうに
私に視線をぶつける
静かに泣く私に
茜音さんは花柄のハンカチを差し出した
私は無視をして
バッグをひざの上でがさがさ探りポケットティッシュを出して
涙と鼻水をふいた
「私ね母子家庭で育ったの」
ティッシュで目頭を押さえてると茜音さんが話し出す
「物心ついた時には父親はいなくて、母親は酒臭い男をいつも家に連れ込んだ」
茜音さんは チョコレートパフェのバナナをフォークでさして
「そんな環境で育って中卒で家を出たの
歳を誤魔化してキャバクラで働いて
寂しさ埋めるために付き合う男は浮気したりDVだったり…………」