床に視線を落とすと
だんだんとBGMや
ガヤガヤと周りの音が戻って来て
止まってた時間が動き出したかのような
不思議な感覚に襲われた
お互いに一言も口にすることが出来ないまま
伊織くんの背後から
「伊織?伊音?」
2つ紙袋を下げた茜音さんが
近づいて来て
茜音さんを振り返り
「あ…」と小さく漏らした伊織くんのバツの悪そうな表情を見たら
とんでもない犯罪を犯したような
すごく後ろめたい気持ちが押し寄せて来て
一歩、後退り 逃げ出そうとすると
「あら、空羽ちゃん?」
茜音さんが人のよさそうな笑顔を私に向けて
空羽ちゃん
ああ、そうか
彼女と伊音くんの前では
私はまだ空羽なんだ