伊織くん


伊織くん


伊織くん




心の中で何度も彼を呼ぶ



お願い



助けてほしい



出口が見つからないよ



こんな ところに



置いていかないで








――――ガチャン…



ドアの開く音が私を現実に引き戻して



振り返るよりも手元の灰が落ちそうだったから



タバコを灰皿にこすりつけてから



てっちゃんの部屋の方を振り返る



「何してるの?」



眉をしかめて眠たそうな目を私に向けた



「別に」



私は短く答えてTVに視線を向けた




「………風羽」



何か言いたげに口を開いたてっちゃんの言葉を遮って




「てっちゃん」



「………うん?」



「てっちゃん
一緒に寝る?」



私は顔だけ振り返り



部屋のドアの前に立ち尽くしたままの てっちゃんを見上げて



「ね?私と寝てみない?」



スッ…と視線を逸らして
てっちゃんは



「冗談………」



力なく呟いた