どのくらいの時間が経っただろう
すごく長かった気がするけど
実際は30分も経っていないのかも知れない
伊織くんが静かにベッドに座る
ドクン、ドクン、ドクン……
寝たフリしたまま
不安で心臓が痛かった
ふわっと優しく
伊織くんは私の髪をなでた
優しく優しく
ゆっくり なでて
―――伊織くん…………
「…………起きてたの?」
伊織くんが
小さな掠れた声で言った
どうして わかったんだろう
寝たフリしたのに
「ごめんな…風羽ちゃん」
伊織くんの指が私の頬に触れて
涙を拭った
そこで初めて私は
自分が涙を流してたと知った