――聞いてない ――私は何も聞いてない ベッドに潜ってギュッと固く目を閉じた 伊織くんの匂いが 伊織くんの匂いがして 目が熱くなって 込み上げてくるモノを 必死でこらえた 「……じゃ、おやすみ」 伊織くんが電話を終える 「―――はぁ……」 深い深いため息が聞こえて しばらく伊織くんは 動かなかった