「…………大丈夫だよ………」
………ん?
ゆっくり目を開けると
隣に伊織くんはいない
部屋はまだ暗い
朝はまだ来ていないみたい
何時だろ………
起き上がって
テーブルの上のケータイに手を伸ばそうとしたら
「………泣かないで」
キッチンの方から
伊織くんの声が聞こえる
…………伊織くん?
ベッドからキッチンは直接 見えない
寝てる私を気遣ってか
とても小さな声
囁くような話し声…………
「………うん……わかってるよ」
誰かと……電話中だ
私は静かにまたベッドに横になり
耳をすました
ドクン……ドクン……
もくもくと
胸の中に黒い雲が広がって行くみたいだった
伊織くんの電話
聞いてはいけない気がしたから