伊織くんの部屋に入ると
「………どうしたの?」
私は 呆然と呟いた
伊織くんの部屋は
段ボールでいっぱいだったから
「ごめんな、散らかってて」
伊織くんが申し訳なさそうに言って
テーブルにウーロン茶を置く
え?
これって…………
「伊織くん引っ越すの?」
まだ混乱してる頭で伊織くんに訊く
「実はさ………」
伊織くんはベッドに座って
ウーロン茶を一口飲んでから
「実家に戻るんだ」
実家に?
「どうして?」
「うん………」
伊織くんは目を伏せて
「親父が入院してる」
「え?お父さんが………?」
伊織くんはうなずいて
「結構、悪いんだ。
だから夜のバイトも辞めて
実質的にオレが書店継がないとならない」
…………伊織くん
ちょっと待って
予想外の話に私は何も言えなかった