ドックン、ドックン
新堂書店の裏
伊音くんの家の玄関に立つと
今さら とても緊張する
伊音くんは伊織くんの腕の中
すぅすぅ天使のような寝顔
「ただいま」
伊織くんがそう言って靴を脱ぐと
「お帰りなさい」
若い可愛らしい女の人の声がして
家の奥から出て来た
「伊音…寝ちゃったの?」
伊織くんの腕の中を笑顔でのぞく
「布団、用意して茜音(アカネ)さん」
伊織くんの言葉に
「は~い」
茜音さん
そう呼ばれた人が視線をあげ
伊織くんの後ろにいる私に
初めて気がついた
きょとんと私を見つめて
「空羽ちゃんだよ」
伊織くんが言うと
ああ!って表情が明るくなった