物音も人の気配も何もしない保健室前の廊下。

でもそこに、電気のスイッチの入っていない懐中電灯が無造作に置かれていた。

「穂高…これ」

廊下に落ちている懐中電灯を指差す。

「ここにいたんだ」

穂高はちらっと懐中電灯に目をやると、すぐに保健室のドアに手をかけた。

ガラリと勢いよく開け放たれたドア。

そのドアの中から、ド……と音を立てて崩れ落ちる物体。

「………き、きゃあああああああああ!!!」

思わず悲鳴をあげたわたしの肩を穂高は抱き寄せた。

「…遅かった」

廊下に倒れて瞳を見開いたままの用務員のおじさん。

その喉は引き裂かれたように大量の血を流していた。

「ヴァ、ヴァンパイアにやられたの…!?」

その瞬間、保健室の中から恐怖にひきつったような泣き声が聴こえてきた。

穂高が素早く用務員のおじさんを飛び越えて中へ入る。

「ほ…穂高!!」