「で、何があったんだ?」


朝まで居たマンションに行くと、絢音は青ざめた顔をして迎えてくれた。


そして今も、柄にもなく正座をして深刻そうな顔でこちらを見る。


「これを聞いてほしいの。」


そう言って絢音が差し出したのは、絢音の携帯だった。


ピンク色の女らしいカバーを付けた絢音の携帯。そのディスプレーには“伝言メモ”という文字が見えた。


俺は絢音が何を言いたいのか検討も付かず、差し出された携帯を手に取ると、自分の耳に当てた。



『突然のお電話すみません
私“星空クリエーティブ”の大野と申します

泉絢音さんに大切なお話があるので
折り返しお電話お願いします』


は…?


俺は耳を疑った。



“星空クリエイティブ”


この名前に聞き覚えがないはずがなかった。


「星空クリエイティブって…」


俺の所属する事務所じゃねえか…。



「かけ直したのか?」


そう言うと、絢音は肩を竦めて頷いた。


「で?なんて?」


「怖かったから、その内容も録音してあるの。」


そう言って絢音は自分の携帯を器用に操作すると再び俺に手渡した。