入学したての春。

慣れない教室、クラスメイト。

そして、切り替えることの出来ない私の気持ち。

まだ、中学のときの初恋を引きずっていた私は物足りなさを感じていた。

ひとつだけ、証明出来たのは筆箱をあたると出てきた消しゴム。

このケースの中にはまだ忘れられない名前がうっすらと残されていた。

『なぁ、消しゴム貸して。』

入学してから2週間ほどたって、斜め後ろの席の男子が小さな聞こえずらい声で言った。

少し迷ってから貸してあげた。

帰ってきた消しゴムは…

『ごめん…欠けた。』

少しだけ壊れて戻ってきた。