俺は栄養失調のガキから食い物を奪ってまで生き残ってきたのだ。

理由はどうあれ俺に死の権利はない。

まぁ、見惚れるような体でもないが、それはともかく。

俺は鏡から視線を外し、蛇口の脇の薄汚れたコップに水を注いだ。

水は綺麗だった。

水道の機能が残っていること自体おかしなことなのに、

地面からの湧き水が水道水よりも汚いというのにはさらに驚かされる。

おかしな話だ。

世界の歯車はとことん狂っているらしい。

俺はコップの水を片手にまた窓際へ戻る。

この部屋は二階だったので視界を遮るものもなかったが、

窓の外には崩れかけた家と乾ききった土しかない。

黄色い花はまだ閉じていた。

それでも今日は珍しく天気がいいのにな。