それに。

ベッドを抜け出しながら思う。

「お前にゃ快適なんだろうよ」

昨日、窓際に置いた小さな鉢に言った。

黄色い花はまだ閉じている。

細い茎にギザギザの葉。

地面におろしてやればもっと伸びただろうに、

この小さな鉢の中じゃ、

きっと窮屈に右往左往しているに違いのない根。

俺が水をやり、生かしている植物。

逆に言えばこいつを枯らさないために俺は生きているのかもしれない。

どちらにしても同じことだ。

こいつも俺も生きている。

安普請な素泊まり宿であろうと、

泊まれたことに感謝しなけりゃならない理由がもう一つ。

野宿ではままならない綺麗な水が蛇口をひねれば出てくることだ。

そう。

俺もこいつも生きているのだから、

とりあえずは毎日を生きていかなけりゃならない。