「あいつは幸せだった
だろうかって、
いくら考えても
答えが出ないんだ」
「当たり前だ、馬鹿」
あっさり言い切られて涙も引っ込む。
「馬鹿はないだろう。
人が落ち込んでいるのに、
少しは慰めたらどうなんだ」
サクラはいつもの皮肉っぽい笑みを口元に浮かべ、また首をかたむけた。
「なら、聞くけどよ。
幸せじゃなけりゃ
不幸せなのか?
絶対に幸せに
生きなきゃ
いけねぇってのか?
トノが幸せじゃ
なけりゃ
安心できねぇのは
おめぇだろ」
「けど、俺じゃない奴に
飼われてたら
もっと長生きできてた
かもしれないとか…」
「本当に馬鹿だな、
おめぇは」
サクラは呆れたように大きくため息をついてから、
少し体を前に乗り出させた。